今回の注文は、アシンメトリーがテーマです。
サンク・カロさんの時計の皮ベルトは通常、文字盤をはさみ、シンメトリーにするデザインです。
そこをあえて、対称でなくして、
それでも全体として、バランスの良いものを作って欲しいという無理を言ってみたのです。
楕円形の虎目石と丸い象牙印鑑、形も色も違えど、高さを揃えることで、調和を創り出す。
さすが、アーチストサンク・カロさんです。
虎の縞を片側につけ、全体を黒、縞を黄色にとお願いしました。
色を反転させて、なお、虎に見えるように、という無理をここでも言っています(笑)
自分で作るわけではないので、自由にアイデアが出てきます。
サンク・カロさんは美術的センスがあるので、虎の縞は、一発勝負で描くのかと思っていましたが
緻密な計算のもと何度も描いて、納得にいったものを選んでくれたようです。
そして、工事と言われた理由がわかりました。
象牙の後ろ側にビスを入れ、ネジ式にして、象牙の取り外しが出来るようにしてくれたのです。
はんことして、押せるようにしてくれたのです。(印影は逆になってしまいますが)
秘密にしていて、驚かしてくれました。
この時計を付けてみて、見た目と違いその軽さに驚きました。
以前作って頂いたものが、重くて仕事中着けていられないと言ったのを、
きっと覚えてくださっていたのでしょう。
お客様が想像した以上のものを作るこの姿勢、
自分は失ってしまったのではないかと自問します。


もし、この時計の皮ベルトと同じようなものが欲しいと考えたら、いくらになるのでしょう。
結構人気者のはんこ職人が真剣に時間をかけて彫り上げた象牙の飾り、

ホントに大人気の時計の皮ベルト作家さんが、
イレギュラーな作業を試行錯誤しながら作り上げた時計の皮ベルト。
世界でひとつのものが合わさっています。
材料よりも二人が制作の要した時間を考えると
100万円でも、安いくらいです。
宝物を手に入れました。
サンク・カロご夫妻、ありがとうございました。
そうそう、1番大変だったのは、白い糸で染めながら縫ったことだそうです。