家業を継いでいますので、あらためて言われると直ぐに思い浮かびませんでした。
はんこの彫り方ではなく、印稿のデザインを毎日チェック指導してもらっていました。
印稿を書き、父にチェックしてもらい、直すポイントを言われて、書き直して、またチェックしてもらう。
教わったことというより日常業務でした。
10年くらい経った時に、印稿を見せても直すポイントを言われなくなり、勝手に見せるをやめました(苦笑)
ある時、父にお客様が前のが気に入ったので、また頼みますと言われて、実印の注文をしてくれました。
そこで父は、おそらく、前のはんこと変えようと思い、見たことがないとても直線的な印相体で彫りました。
ところが受け取りの時、お客様が前のと違うと不満気に言っていました。
父の意図は的外れで、お客様は前と近いイメージのものを求めていたわけです。
とても印象的な出来事でした。
父がお店に来れなくなってから、はんこのご注文のお客様には目の前で、ラフデザインを書き、好みを聞くようになりました。
このような独特な接客法をごく自然に、思いつき実践できたのは、父の教えがあったからでしょう。
息子と真逆に、口数の少なかった父は、たまにしか喋らなかったので、喋った時のことがとても記憶に残っています。
私の結婚式の時、親族代表として話した時、とても緊張していましたが、欲が人を動かすというような話をしました。
結婚式にふさわしい話ではなかったかも知れませんが、それが息子に伝えたかったことだったのでしょう。
息子は口数を減らすことはできません(笑)