2015年01月06日

先達に教わる御朱印のはんこ

年末に御朱印に使われるはんこ、5センチ角の手書きのゴム印と21ミリ角の柘のはんを納めました。

ご注文の際に戦前に作られた21ミリ角の柘のはんこの印影を単純に拡大して、50ミリのゴム印にして欲しいと言われ、印影は甘いもの、それを単純に拡大するとアラが目立ってプロとしては許せないものになります。うちで頼むなら、この印影を基に、版下を僕が書き直し、ゴム印にします。当然、僕の作業代もかかります。と説明すると納得していただき、ご注文となりました。

その際に雲を入れるとか、もっと凝ったはんこを提案してみましたが、お寺では凝ったはんこはあっても、神社では通常神社名だけのシンプルなものだそうで、却下されました。
伝統と格式です。

普通に篆書体でお作りして、自分らしさを出すにはどうするか?
それは気持ちを込めるしかないと考えましたが、御朱印をもらう人がどのような気持ちでもらうのか分かりません。
はんこ屋は御朱印に使われているはんこのデザインを知りたくて頂くので、一般的ではありません(笑)

ちょうどその時に注文に来られたお客様や仲良しのお客様達に聞いても、答えが出ません。
気になったのは、有難い感じがしますとはんこではなく文字の方が気になりますでした。

さて、時間となり、どんな気持ちを込めれば良いか結論は出ないまま作成開始。
21ミリ角の印鑑には戦後に作られた見本のはんこがあり、それは普通なので、通常業務としてできます。
問題は5センチの手書き版下です。

試しにざっとトレースしたものと、見本を見てざっと書いたものを比べると、明らかに見て書いた方がイイです。
トレースすると文字の勢いが無くなります。
でも、見て書くと、戦前のはんこのイメージを残せるか自信がありません。

そこで、文字の基本線だけ鉛筆でトレースし、後は見て書くことにしました。
最初に気付いたのは「田」の字の大きさが小さ過ぎることです。
21ミリでは違和感がない大きさですが50ミリでは空間が目立ち過ぎて、そのままではダメです。
「田」を少し大きくしました。

次に気になったのは「社」です。
通常篆書体では@です。
しかし、その戦前のはんこでは
「神社」がこのような形になっています。A
篆書体としてはあり得ない「社」が使われています。
なぜなら「之」が篆書ではBになるからです。
ですので、篆書体としてはCのような無い字を表してしまうことになるからです。

神社.jpg
はんこ職人としては「之印」(のいん)と良く彫る字ですので、知らなかったとは思えません。
印相体では読めればいいので@もあり得るのですが。

でも直ぐに気付きました。
神社と上下で字の形を似せるために、きっと「社」をこの形にしたことを。
生け花の世界では最初に学ぶことは対象にしないこと、自然は非対応なもの。
その自然の中にある神社は対象な建物。
そこに尊厳さがあり神格さがあると聞いたことがありました。
先達のはんこを見て、分かりました。
どんな思いを込めるかではなく、対象を意識しながら、美しいものを作ることが重要なことを。
昔のはんこ職人さんはすごいな。

出来上がってから、ご住職をしているいとこに、御朱印を渡す側の気持ちを聞いてきてくれた方がいて、教えて頂きました。
「意外な答えが返ってきました。「無」だそうです」
そう、もうその答えは分かっていました。


ネット上、どこの神社のはんこを作ったか明かすことはできません。
ご来店頂ければ、お教えすることはできます。
昨日、いとこにお願いし御朱印を頂きました。
きれいな字です。
二つ押されたはんこ、どちらも自分らしさが出ていて、とても良いです(笑)


posted by 一日3本 at 10:56 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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