1.印相体のメリットは字林、辞書がないことです。
他の書体には、字林、辞書があり、印章店が使用する辞書は、たいてい同じようなものです。

他の書体にはお手本があり、それに準じて作成しますので、どこで作成しても似てきてしまいます。
(もちろん、ものスゴく技量、デザインセンスのある職人さんは別ですが)
それに対して印相体は、辞書、お手本がありませんので、ある意味自由。
職人個人の裁量、技量で彫ることができます。
例えば佐藤さんで10本、太目の篆書体横入れでご注文頂いた場合、
どのようにして、はっきりと分かる違いを出せるのでしょうか。
硬目の篆書、柔らかめの篆書、小篆風をそれぞれ字の形を変えて、2本ずつ、これで6本。
もちろん、細かく違うのは当たり前ですが、
一般の人が印影を見て直ぐに違いが分かるようにするためのバリエーションに限界を感じてしまいます。
印相体横入れ10本佐藤さんでと言われても、
問題なく、それぞれ特徴的な違いを出して彫ることができます。
ホームページに上げているアレンジからその中間、
一文字ずつ違うアレンジ(佐はえん印相体、藤は構印相体)でバランス良く見せることもできます。
ちょっとハートを隠し入れたり、文字の先をくるっとしたり、自由です。
自分が印相体が好きだからかも知れません。
2.機械彫りは印相体が苦手である
篆書体より印相体の方が機械彫りは苦手です。
その証拠にAという彫刻機メーカーで自分の父親の篆書を機械に組み込み、
機械彫りを父親の手彫りですと販売し、大成功をおさめた方がいます。
発売当時、印相体はなく、
ヒゲ篆書とかいう篆書体の四隅にヒゲのような線がついたものがあったようです。
サイトでは、もっともらしく印相体を否定していました。(お父様のご冥福をお祈りします)
また、今は亡き馬場印房さん、あんなに立派な考えの人だったのですが、
当時1千万円かけて独自に自分の篆書などを機械に組み込んだそうです。
馬場印房さんで作った印相体の印影は、よく見かける機械彫りの印相体でしたので、
印相体は機械に組み込んでいなかったようです。
篆書体は機械に組み込んで、彫ってもそれらしく見えてしまい、
印相体は機械で作った印稿では、なかなかまともに見えません。
3.偽造に強いのは手で彫った、手で仕上げた印相体
どんな美しく彫った篆書体の印鑑でも、
文字部分はスキャナーで形として読み込まれてしまえば、コピーされてしまいます。
印材自体が正円でないので、枠と文字が接している部分が機械彫りの苦手なところ。
基本四隅しか枠とつけない篆書体は手で枠を整えるのは簡単です。
たくさん枠についている印相体の枠を細く均一に整えるには、技術と時間が必要です。
普段からこのように説明しているのですが、
今年男性が来て、このはんこは手彫りですか?と聞かれました。
「機械の字ではない篆書体ですので、手彫りですね。仕上げがあまいので、おじいさんかな。」
近所のはんこ屋さんに作ってもらったもので、
このはんこを偽造されてしまい、犯人は1千円の高級外車を手にしたそうです。
警察で手彫りと言われ、奥様の方が当店の印相体ではんこを作って頂いていたので、
話をされに来たのでした。
はんこ職人の皆さんは、篆書と印相体
どちらが印稿書き、そして仕上げに時間がかかるか、ご存知のことと思います。
<印相体の条件>
1.八方位を意識して、文字を枠に付ける。
八方位を意識せず、枠に付けるのが、まがい物の吉相体です。
2.文字の太さがおおよそ均一に見える。
3.読めること
印相体には辞書がありませんので、篆書の辞書をお持ちの方に読めなければ、
印鑑として、失格です。読めることが重要です。
通販で印相体でハンコを作られた男性が、区役所の方に、読めないので、
はんこ屋さんに見て来てもらってと印影を持って来ました。
今なら、忙しいからと、印影を読むことは断るのですが、
当時は父もいて、時間がありましたので、見てみました。
印影だけでは、読めず、名前を聞いて、やっとどうなっているか分かりました。
結論は、アレンジし過ぎて、読めないでした。
4.印影が美しいこと
縁起物と名乗る以上、印影が美しくなければなりません。
何年たっても、木彫りの仏像が愛されるのは、美しいから。
美しいと思えるもの、持っていることで嬉しくなるものでなければなりません。
以上4点が印相体の条件です。まったくの私見です。
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