2013年10月05日

2-2すべての道は印相体に通ず

印相体に関する歴史的資料は、見つけられず、これははんこ屋の空想印相体話です。
<昭和の印相体>
山梨県六郷町は江戸時代は足袋職人さん達の町だったようです。
足袋が廃れ、山梨の水晶にハンコを彫っていたこともあり、はんこの町に変わっていきました。
もともとある職人気質の町が、上手に方向転換したのでしょう。
販売方法として、訪問販売やカタログ販売、新聞広告による通販もありました。
全国展開です。

営業の仕方として、はんこ必要ありませんか?ではなく、
枠に文字がたくさんついているが開運のはんこ、
開運のはんこを作りませんか?の方が明らかに売れると思います。
効果的なセールストークです。
縁起担ぎが好きな日本人。
縁起が良いというものは、もともとは、誰かが思い付いた言葉遊びから来ているものも多く、
新しい縁起担ぎも受け入れやすい気質です。
枠に文字がたくさんついていると縁起が良いというのは、覚えやすく、人に話しやすいです。
今よりもたくさんのはんこを押す機会があり、
自分の名前が刻まれたものに縁起を求めるのも当然のことでしょう。

印相体というネーミングも素晴らしいです。
誰が考えたのでしょうか?
手相と同じようにはんこには印相があり、それを良く彫るのが印相体です。

印相体が流行るのも当然です。
流行れば、必ず真似た亜流ができ、
更には開運を強調し、法外な金額を請求する
悪徳商法、霊感商法も生まれてしまいました。

<昭和の印章組合>
昭和の時代、はんこ職人には、どうやってなったのでしょうか?
はんこの大型店で技術を覚え、独立という形が一般的だったようです。
また、山梨で字入れ、仕上げ彫りができる人は、東京、大阪などに出っていって、
はんこ屋を始めたようです。
そんな印章店の集まり、印章組合の組合員から印相の反対運動があったようです。
全国印章組合の会長さんが、今は亡き馬場印房さんの初代さんの時です。
その反対運動に対して、印相を静観するのも一つの選択としました。
一過性のものなら、消えてなくなり、
本物ならば、ますます流行り無視できないものとなるだろうという賢い選択です。

なぜ印相の反対運動が起こったのでしょう。
まったくの想像ですが
開運などと根拠のないものを印章と結びつけ、篆書をいい加減にアレンジし
印章の文化を壊すものだ。
悪徳商法、霊感商法とも結びつき、このままほっておけない。
これが表向きの理由。

ひとつの町に1軒か2軒の印章店がある時代、
機械彫りのチェーン店もネット通販もありません。
ネットがないので、情報も少ない中、
その町を生活圏にしている人たちは、すべて自分のテリトリーと
思っていたのではないでしょうか。
そこへ、訪問販売や通販で、自分のテリトリーを侵された感があったのでは
ないでしょうか。
インチキで、人のテリトリーを侵しやがってというのが本音ではなかったのでしょうか。
反対運動をしている人の店舗でも、印相体で彫っていたという噂があります。

もうひとつ、はんこをキレイに彫れる技術と印影をデザインする技術は別物です。
他の書体には字林、見本があり、それを見て、普通の彫れるわけです。
しかし印相体には字典がありませんので、どのように彫って良いか、分からないわけです。
また、篆書で彫った後に枠にあまりついてないじゃないなどと、クレームもあったのでは
ないでしょうか。
印相体めんどくさいが、本音だったのではないでしょうか。

当店では、初代の祖父は、印相体は篆書より彫る面積が小さいので簡単と言っていたそうです。
篆書系でも、世の中にない書体で彫っていましたので、印相体くらい簡単だったのでしょう。
余談ですが、今年初代の篆書で彫った印鑑をお持ちの方が、この書体の雰囲気で彫ってと
お孫さんのはんこをご注文頂きました。

初代の彫ったはんこを見て、上手い、
母がよくおじいちゃんの篆書には1本芯が通っていると言っていたのを思い出しました。
真剣に取り組み、印稿書きに時間をかけ、いつもより仕上げ部分を多くしてみたりしました。
合格点には達しましたが、1本芯は通りませんでした。
まだまだです。
なぜ1本芯が通らなかったがわかりました。以前は理由がわかりませんでした。
それは、真似て彫ったからです。
今回彫った篆書系の字は自分の字になっていないので、1本芯が通らなかったわけです。
印相体の字はたくさん、お彫りしているので、自分の字になっているので、格別に上手に彫れるのです(笑)

話が戻り
結局印相体ブームは、去らず、(開運)吉相体という、印相体の紛い物を作ってしまいました。
八方位を意識せず、篆書を伸ばして文字を枠につけた書体です。
そして酷いネーミング。真似し過ぎです。

東京の印章組合が昭和のしたことのひとつは、荒彫りの機械化の推進です。
幹部理事のお店から、率先して導入したようです。
ところが、完全手彫り、手仕上げ、機械彫りとこれまた、ネーミングの悪いはんこの作成分類を
印章組合が作ってしまいました。
少ないとも東京では、荒彫りは彫刻機が普通のことのはずが、それを否定するような分類でした。

次回は開運の本質から。
posted by 一日3本 at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 印相体職人養成講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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