「細かい部分も彫りやすく、且つ強いので、例えば龍のウロコ部分にアルファベットで名前を入れることが、出来たりします」
「そうなんですね。彫りやすいのなら目無しでお願いします」
そして、1カ月後目無しを選んで頂き、デザインの打ち合わせ。
細かい部分が彫りやすいのも事実。
でも結局のところ、金額が高ければ、製作に掛けていい時間が長くなり、気合いが入るというのが1番大きいのかもしれません。
「目無しは、象牙の加工前にはその牙から取れるか分からず、加工してみてはじめて分かるそうです。ちょっとお時間を頂ければ、何本か用意して選んで頂けます」
「いいんですか。選ばせてもらえるなら是非」
漢字の一部を龍にするお客様のアイデアを取り入れラフが出来ました。
ウロコの中には、ファーストネームを入れることになりました。
しばらくして、
「この前注文の時に何も持ってこれなかったので、これを。小田原がういろう発祥と知っていましたか」

「ういろう好きなのに、知りませんでした」
食べてみるとと名古屋のういろうより、和菓子に近い味でした。
もともとは、ういろうが和菓子だったことが分かりました。
ウロコの中のアルファベット難しい。
彫っていて細くしても、強さを感じる象牙の目無しだからこそを、実感します。
そして、受け渡しの時、
「あれ、名前が珍しいので、これだと」
「しまった。やってしまいました。名前書き間違えと思ってしまいました」
忙しいからといって、確認を怠るから、こんなことになるのだと反省です。
印面をルーペで見て、なんとかなりそうです。
「多分、なんとかなると思うのですが、今の週末の疲れた状況では、失敗すると思いますので、休み明け、月曜日の午前中にトライして、電話します」
「これ、どうぞ」
「重ね重ねすいません」
アンティークのパンを頂きました。

チョコの甘さに元気を頂き、トライ。
あんなに難しく思えたことも、月曜日の午前中ならできるものです。ふぅ。
電話して、今度こその完成を伝えました。

そして、大安の日に受け渡し、ルーペで確認して頂きます。
「この龍が気に入っていましたので、生きて良かったです。」
「ホント、すいませんでした」
「これ」
「なんどもすいません」
今度は、マドレーヌを頂きました。
そうだよ。

マドレーヌはレモン味だよねと思い出せる味でした。
後、できるのは、話をすることぐらいなので、
お礼を含めて、多目にお話しました。
「そんな不思議な話は、人生で2度目で」
と、喜んで頂きました。
忙しい時こそ、確認が重要。
はんこ屋さんに無理を言うには美味しいものが重要(笑)