2007年02月27日

『三』についてスゴク考えた

画数の少ない字ほど
真剣にはんこを作っている人にとっては難しいです。
画数が少ないというと、すぐに思い浮かぶのが『一』でしょう。
しかし『一』は篆書事典に載っている
アレンジの仕方がありますし、
数多く彫っているので難しくありません。

最近ご注文頂いた『三○』の銀行印横入れは難しかったです。
いかにして右半分を『三』で空間を埋めるかです。
まあ、縦入れをオススメすればまとまり易いのですが、
銀行印は横に入れて、止めて貯まると縁起をかつぐもの
との説明が多くの人からご支持を受け、
今の当店の隆盛があります。
やはり2文字の銀行印は難しくても横入れがオススメなのです。
お客様には、あらかじめ
『三』は工夫させて頂きますとオドシときました(笑)

工夫するとしたものの篆書事典には、
記憶のとおり今の文字のまま三本の横棒が載っていました。
あとはご祝儀袋などに書く時『二』を『弐』としますが、
その中を二でなく三にするものが載っていますが、
もう文字が違う感じなので通常使いません。

よくするアレンジは、
真ん中の横棒を逆S字というか乙にするというか、
2回カーブさせます。(@)

これでは空間を埋めるのに、まだ足りない感じなので、
真ん中の横棒を一の篆書の形にしたらどうだろうと
書いてみました。
実際のご注文は構印相体でしたので、角張らせて書くと、
もう一方の文字と文字との接点で
◇ダイヤ形(菱形)ができました。(A)
銀行印にダイヤ形が入るのなんて最高だなと
思ったのもつかの間。
真ん中だけがボリュームがあり、デザイン的におかしいです。

気分転換も兼ねて、はんこ屋の先輩に電話して、
どこまで文字のアレンジは許されると思うか相談してみました。

「東堂印章さんのおじいちゃんとうちの父親と二人で、
 昔いくつか文字を作って、今だにその字を使っているよ。
 直ぐに自分で彫ったかどうかわかるよ。
 『一』は今の東堂さんのより更に複雑にしているし」
「おじいちゃんが彫ったのを見たことありますよ。
 右側を伸ばして下に持っていくのでしょ。
 そうですよね。
 昔の職人さんは自分で文字を作っていましたよね。
 今ご注文頂いているのが三の横入れで、
 一番下の横棒を『一』の印相体の形にアレンジしようかなと
 思っているんですけど、見たことないし、
 ありなのかなと思って」
「結局のところ読めるかどうかなんだけど」
「そういえば『二』で下の棒をアレンジしたのは
 見たことあります。
 銀行印なので新しい字もありですよね」

「それはそうと、ホームページに載っていた新書体見たよ。
 あれ一日五分丸(15ミリ丸)3本彫るのも辛いんじゃない」
「わかります。大変なんですよ。
 どこまで、この大変さが伝わっているかは、
 わかりませんが(笑)」

実際に印稿を書く段階では、
一番下の横棒のアレンジだけでなく、
真ん中の横棒もカーブさせ、完成。(B)
ちょっと読めない感じですが、立派なものになりました。

翌日、はんこ屋の先輩に電話して
真ん中の横棒もカーブさせたことを伝えると
「電話の後、ちょっと書いてみたんだけど、
 下の棒だけだとおかしいかなと思っていたよ」
「真ん中の横棒は枠には1カ所しか付けず
 せめてもの読みやすさを出したんですけど」

こうして、印相体の『三』新しい形ができました。
ご注文頂いたお客様からも、想像を越える工夫と
誉めて頂きました。

ちょっとはんこ屋職人さん、せっかく一日考えた新しい字の形、ブログとはいえ、公開していいの?
いいんですよ。
少しで多くのはんこ屋さんに商売としてだけでなく、
少しでも良いはんこを作るという向上心を持って
仕事をするきっかけになれば。

三.JPG

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posted by 一日3本 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | はんこ屋職人養成講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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