実印は早急に必要で、まず実印をお渡し、
納期をズラして、銀行印のお渡し、
こうすれば、1回多く、とてもキレイな人にお会いできます(笑)
銀行印は、モチーフ入りご希望ですが、具体的には、決めて来られなかったので
「なんでも、ご希望のもの、好きなものでいいんですよ」
ちょっと考え出てきた言葉は
「観音様」
「観音様?」
「無理ですよね」
「できるかな。
偶然なんてないので、お客さまの口を通して、
はんこ屋さん、そろそろ、観音様を彫っていいよとメッセージが届いたと考えましょう。
解脱したくない人なのに、観音様彫っていいのかな(笑)
「好きな観音様がありまして、『ふくうけんさくかんのん』」
「どんな漢字ですか」と漢字を書いて頂くと
『不空羂索観音』
これでiPhoneで検索してみます。
写真を見て、ホントにできるのか?観音様。
とにかく大きく彫らないと無理ですので
観音様自体を文字の一部にしたいところです。
直ぐに思いつきました。
お名前の漢字の一部を、観音様でなんとかOKでしょう。文字を構成する要素はあります。
「お客様のお名前ならば、彫れそうです」
画像を見ながら、ざっと書きます。
「あれ、手の数がこの写真とこの写真で違います。」
「観音様は人々を救うために、手が増えていくそうです」
「へえーなるほどね。
はんこ屋さんも1組は接客用、1組はハンコ彫る用と増やしたいところです」
「好きな観音様まで指定してしまい、申し訳ありません」
「モチーフは具体的に指定して頂いた方が助かるんです。
漠然と観音様ですとまず一般的な観音様イメージを探り当ててとなると
もうそれで時間がかかってしまいます。
それにしても、いいのかな。こんなはんこ屋が観音様を彫って」
とてもきれいな人にメッセージを伝えさせるとは、はんこ屋のことを分っての粋な計らい、
観音様彫り、謹んでチャレンジさせて頂きます。
ざっと書いてみて、なんとかなりそうです。
資料として「おとなの仏教入門」という雑誌も購入。
気合が入っています。
しかし、この雑誌を購入したお蔭で、疑問が湧いてきました。
この『不空羂索観音』様の説明に
『百発百中の羂索(金具の付いた縄)で衆生を救い出す』とありました。
それはどれ?
ちょうど実印を受け取りに来たお客様に聞いても不明。
出雲に行かれたそうで、生姜糖を頂きました。
生姜糖で体をあたため、気持ち的にはとてもきれいな人にあたためられた気分。
間違っていませんよね(笑)
こんな世俗的な人が観音様をお彫りしていいのでしょうか。
偶然なんてないんだからと、もう一度強く思います。
さあ、制作スタート。
まずネットで羂索を調べると向かって右側の真ん中に持っているものが、それと分りました。
まずは、もう一度ざっと書いてみて、観音様をどのくらいの大きさに書けば良いかを決めます。
そして観音様の画像を見たりトレースしたりして、
1色で観音様をどうすれば、表現できるかを探っていきます。
朝から始め、午後1時くらいに観音様なんとか書け、
次はこの観音様に合わせて、文字をデザインしていきます。
我ながら上手です。
印稿ができれば、半分くらいできたと同じ、もう午後2時か。
一日これだけをお彫りすれば、いいわけではありませんので、
ここで他のはんこの作業に入ります。
仕上げ作業も細かいので、少しでも疲れていない最初の1本にします。
で、結局深夜0時過ぎ、その日彫るべき他のはんこも完成し、作業完了。
上手に観音様彫れてしまうものだなと、終わってしまえば、冷静に思います。
それよりも、このはんこ、受け取りに来られたら、
とてもきれいな人ともう会えなくなってしまうと思うと。。。
あくまでも世俗的な人です。
もちろん、納得して頂きました。

さて、ここで問題です。
まったりさん、甘栗ちゃん、よろしいですか。
はんこ屋はこの観音様で、なんという漢字を彫ったつもりでしょう。
ご本人には、その字に見えますと言われました。
わかりますか?
尚、このような観音様モチーフは、ご来店の方だけのご注文とさせて頂きます。