「4月です。」
「というと8カ月。それだけ、足繁く通うと、
こんなはハンコを手にすることが、できるわけだよ(笑)」
「通勤途中なので、2日に1回は寄ってますからね」
転勤に伴い、はんこ屋の前を通るようになったちょっと障害のある30代男性、
仕事で使うゴム印をご注文頂きました。
ゴム印工場の間違いがあり、それを見逃して、渡してしまい、すいませんと作り直しました。
その時も、怒らず、
「気をまわし過ぎて、間違えたのかな。」
「ミスを見逃したのは、僕の責任です。」
そんなことがあり、もううちには、注文しないだろうと思っていると、またゴムのご注文。
またまたご注文の際に、「ちょっと安くしてよ」といいますが、
「そんなお店ではないので」と切り返します。
段々仲良くなっていき、はんこ屋が忙しいことに気付いていて、ただ話していくのでなく、
なんかちょっと注文したり、買ったりして、話していきます。
安くしてよは、お店の人とコミュニケーションをとるための言葉だったことが分かりました。
ある時に住宅ローンを繰り上げ返済を重ね、後数年で払い終えるといい、
さらに資産運用目的でマンションを4つ持っていて、
ローンの支払いと家賃収入で、少しだけプラスと言います。
人って分からないものだなと思いました。
ある日「今度、住宅ローン完済記念に、象牙のはんこ、作りませんか(笑)」
「はんこは、いっぱい持ってるからな」という会話がありました。
数日後、お持ちの象牙はんこ2本と黒水牛のはんこ1本をお持ち頂きました。
「これはイイはんこです。
作り直す必要がありません。
ぼくの象牙のはんこを作ってもらう野望は潰えました(笑)」
その後
「詩人なんですよ」
「えっ詩人?」
「詩集を出していて、たまーに、ちょろっと印税が入ってくるんですよ」
「次々に驚かされるな(笑)」
それから数日後、
「鬼猫って言うんだけど」
「その鬼猫は、何?」
「詩の中に、猫が出て来るので、
まあ、ロゴかな」
「鬼猫名義の詩集なの?」
「春木で」
「もし鬼猫とぼくが、彫るならば、鬼は鬼っぽく、猫は猫っぽく、彫れるよ」
「じゃあお願いします」
ということで、サインした時に押すイメージの四角いはんこをご注文頂きました。
本人が書いた鬼猫イラストも入れました。
受け取り後、数日して、
「ホントに嬉しくて」と言ってくれました。
彫ってよかった!
