2011年11月25日

感謝

4年位前、夜の8時過ぎ、真剣にはんこを彫っている時、
酔っぱらいのおじさんが入って来ました。
お酒を飲んで来るようなお店ではないと思っていますので、
席も立たず、つっけんどんに答えます。

飲みに行くと、1万円以上使うというので、
1回飲みに行ったつもりで、我慢すれば、はんこ作れますよと言いました。
はんこ屋の似顔絵が気にいったと言ってました。

酔っぱらい相手で、作業が中断させられたと思いつつ、
また集中して、彫り始めた時、さっきのおじさんが、再び登場。
銀行で、はんこを注文するためにお金を下ろしてきたと言います。
飲みに行ったと思えば、はんこが作れるなどと面白いことを言うなと思ったそうです。
結局3回飲む分の実印をご注文頂きました。

その後、ご自身用にモチーフを入れた銀行印、奥様用のモチーフ入りもご注文頂きました。
ご注文の時は、必ず一杯入っています。いや4杯くらいかな(笑)

先日、久々のご来店、自分の干支のイノシシだけ彫れるかという質問です。
「彫れますが、ホントは文字無しは、しないのですが、お客様なら特別にやりますよ。
 どんなイノシシにしますか」

石のハンコの本を見ていると、
「これがいいやと、ちょうど「富」だし」
名前の1文字目が富なので、ちょうどいいということです。
「こんな風に四角にしますか、それとも丸にしますか?」
「オマカセするよ。」
「得意なのは丸なので、丸にしていいですか。」
「いいよ。」

落款印がベースですので、あえて八方位は意識せず、空間を意識してお彫りしました。
どうしても1箇所だけ、我慢できず、象形文字のいのしし、入れてしまいました。

受取りの時は、素面です。
「これ、なんのハンコだろう?」
「認印というか、気軽になんでも押せるハンコと言われてましたよ。
 例えば年賀状とか、どうですか」
「今度は欠礼だけど」

「この印鑑、店頭やブログ インターネットで紹介してもいいですか?」
「いいよ。紹介したいくらい一生懸命彫ってくれたということでしょ」
「はい」
「ここに来るのも、来週まで。
 最終決定ではないけど、退職だよ」

あっ、退職記念にハンコを作って下さったんだと、その時気付きました。
去り行くおじさんの背中に向って、深く深くお辞儀をしました。
イノシシ100.jpg
posted by 一日3本 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | モチーフ入り印鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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