2011年08月26日

ニューヨークからのお客様<朱文と白文>

夏の風物詩?(笑)、遠方からのお客様、今年はニューヨークからです。

まずは、ホームページからのお問い合わせがあり、日本に行く8月の2週間の間に、
水墨画と書に押す落款印をそれぞれ1本ずつ注文して受け取ることができますか?というものです。

それに対して、2週間くらいあれば、出来上がりますが、
石に彫る落款印はやっていませんので、木に彫る落款になります。
もし石に彫る落款をお望みでしたら、篆刻作家さんを探されるとイイと思いますと返信しました。

直ぐに返信があり、木に彫る落款を望んでいますので、お伺いします、とのことでした。

自分で分からないことの一つが、
自分が作成する木に彫る落款印は、一般的にはどのくらいのレベルにあたるかということです。
印相体系でモチーフを入れる落款は、他では作っている様子がありませんので
No.1と言ってよいでしょう(笑)
印篆や小篆で朱文、白文でお彫りするもののレベルです。
石に彫る落款印のコンテストはたくさんありますが、木となるとどうでしょう。

そんなことを考えているうちに時間が経ち、
ニューヨークからお客様がご来店され、その場でざっと書きながら、打ち合わせをして
白文と朱文で1本ずつになりました。

さて、どのようにお彫りしましょう。
先代の父から、ほとんど誉められた記憶がありませんが、
何かの時
「お前は、真似するのが上手だから、(はんこ職人として)大丈夫だ」と言われたことがあります。
一人、職人として、仕事をしていく上で、こんな一言が支えになるものです。

そうだ。
真似るのが上手いのだから、石の落款印のコンテストの優秀作品を、参考に彫ってみよう。
もともと木の落款印は石で彫ったように模刻するもの、こう考えた時に、
新聞に日展の優秀作品が載りました。
それを切り抜き参考にします。

印稿をなんども書き直し、とりあえず、一度練習でざっと彫ってみて、
太さなどを調整した上で、本番に臨みました。

朱文は、水墨画用ですので、絵の邪魔にならないよう、シンプルさを心がけました。
普段彫っているはんこに近い、朱文の方が白文より得意です。

白文は、本来はもっと太く(白が多く)直線的に彫るのが、伝統的かも知れません。
四角ばった白文の落款印にどうしても、魅力を感じられませんので、小篆ベースにしました。

出来上がりましたが、
前述の通り、この落款印がどのくらいのレベルか自分で、わからないわけです。
印材屋さんが、ちょうど来ましたので、評価を聞いてみました。
「朱文、上手いですね。完璧ですよ。白文は、やはり石とは違いますね。
 それにしても、朱文上手だな」
「そんなに、誉めてくれてありがとう。
 石でなく木で、このくらい彫れる人知ってる?」
「知りません」

落款印の注文を受けるのは、積極的ではなく、1ヶ月に1本程度です。
毎回久々感があり、彫りあがると、以前よりぐ〜んと、成長していると思うのです(笑)

さて、ニューヨークに帰るギリギリのタイミングで、受け取りに来られました。
ご注文の時より、ずっと笑顔です。
言葉を頂かなくても、気に入って頂いたことが、わかります。
どのくらいのものが彫れるのか、他の人の参考にしてもらうために
印影公開の協力をお願いしたところ、快く了承して頂きました。
そして「友達にも宣伝しておくわね」とショップカードを手にしました。
ご友人は、やはりニューヨーク在住なのでしょうか?

朱文100.jpg

白文100.jpg

意識的に、本来離れているところを、くっつけるのが、落款印らしく見えるこつです。

そう、思い出しました。
初めて木で落款印を彫った時、
父に「木でこれだけ、彫れるのはスゴイ」と誉められてことがあったことを。

posted by 一日3本 at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 良いはんことは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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