楽しくご注文を承っている後ろで、
ずっと待っているご夫婦がいます。
気になりますが、一遍に二組の接客はできませんし、
テキトーに前の組を切り上げることもできません。
というか、しゃべり始めると止まりません(笑)
すまない気持ちはあるのですが、
もし、それで待っている方が帰ってしまっても縁なものなので、
しょうがないと割り切っています。
1時間近く待って頂いたご夫婦、帰らずにいてくれました。
ご主人の実印のご注文で、印相体でざっと書いていると
「『大』という字は突き抜けるように書いた方がいいと
聞いたことがありまして」
「えっ、そうなんですか。
でも篆書、印相体では普通『大』はこう(A)書くんですけど、
これでは突き抜けると関係なくなってしまいますね」
「別に無理ならいいんです」
「そんな大丈夫ですよ。他の文字の形を使えばできますよ。
でもなんで」
「学生時代に『大』は突き抜けるように書いた方がいいと教わり
それまでは、上の部分をほんの少ししか出していなかったんですが
それから、たくさん突き抜けるように出しているんです。
その気持ちが大切だと」
「気持ちが大切ですよね。
本当だ。
書いて頂いた『大』の字たくさん突き抜けていますね」
「でも、無理ならいいんです」
「そんな、せっかく手作りのお店に来たんですから
思っていることは、言った方がいいですよ。
ほらこの字の形(B)を使えば、突き抜けられるでしょ。
ただ、両端を長くしてしまうと
『内』と間違えられるから注意をしてと。
そうそう、あんなに待ったせてしまい申し訳ありませんでした」
「大丈夫ですよ。待つのも好きですから」
「待って頂いたということは、
うちへは、知っていて来られたんですよね」
「ちゃんとしたはんこが欲しくて、知り合いに聞いたら
ここはとにかくスゴイからと聞きまして」
いや〜『ここはとにかくスゴイから』なんとプレッシャーのかかる
口コミでしょう(笑)
『大』の字について言って頂いたお蔭で
スゴさの一旦を感じて頂いたでしょうか。ふぅ。