『今さら聞けない篆書の疑問』があります。
今月号で「印相体は篆書の一種か」という質問に対する
回答がありました。
「印相印は、篆書をくねくね曲げたり、長くしているため、
読みにくくなったり、誤字になることもあり、
全日本印章業協会、印章字林普及協会、各印章組合では、
オススメしていません。
正しい篆書を使って、日本の伝統ある
印章を長く伝承していくことが使命と思います」
こんな内容です。
なぜ、こうも印相体を否定しようとするのでしょう。
篆書の一つ印篆は、はんこに彫り易いように四角く変形し
漢字の棒の数さえ、変えてしまっています。
文字の変形を否定の理由にするのは、どうでしょうか。
印相体より篆書は読み易いかというと
篆書は、文字によっては、現在とまったく異なる形もあり
彫ったことない形ですと、
はんこ屋でさえ読めないことがあります。
篆書の中でも、現在の字になるべく近い形を印相体にしている
はんこ屋としては、読みにくくなるとは納得できません。
誤字になるのは、それは腕が未熟だからで、
印相体のせいではありません。
印相体は文字の位置や他の字とのバランスで
文字の形を変えた方が良い場合が多いです。
例えば「武」苗字でも名前でも使う漢字です。
ざっと書くと
左側の時は、現代の字に近く、
右側の時は、縦棒が中心に近くなる文字を使った方が良いのです。
左側の字の形を右に持ってきてしまうと
点が枠の外にいってしまい消えてしまうのです。
このように色々考えて、文字を成立させるのです。
はんこの彫れない人が、印相体について
何を言おうと気になりませんが、
はんこの彫れる指導的立場の人が
印相体は、篆書をくねくねしたり、長くしただけという認識では
真剣に印相体を彫っている人に失礼です。
一度当店で彫った印相印を模刻して欲しいものです。
そうすれば、どれだけ考えて彫ってあるか、わかるでしょう。
しかも数十万、100万を超えるような落款印ではなく、
普通に使う印鑑で、これほど考えて彫っているんですよ。
篆書体は、字林があり、その字の形で、辞書のまま彫っても
それなりのはんこになりますが、
印相体は、字林がなく、ちゃんとバランスを考えなければ
まともな印影になりません。
ただ単純に伸ばしたり、文字を太くしただけでは、
それこそ誤字を招き、
文字を知った上で、しなければならないのです。
はんこ職人さんの書いた篆書を
機械にフォントとして作ることができても
印相体は、位置、文字の組合せなどによって
色々変える必要があるので無理です。
作ったとしても、その職人さんの雰囲気は出せないでしょう。
はんこ職人の個性が出しやすく、
機械彫りとの差が一般の人にも分かり易いのが印相体なのです。
どれだけ、上手に彫ったとしても、
普通の篆書で、機械彫りとの違いを
一般の人に分かってもらえるのでしょうか。
まして、職人さんの字が搭載された機械と
その職人さん本人が実際に彫ったものとの違い、
軽く仕上げされてしまえば、もうわからないでしょう。
(でも、その字が好きならば、どちらの作り方でも否定しません)
篆書の名人だった初代のおじいちゃんが彫った印鑑でさえ、
受け取った本人ではなく、
はんこを見慣れている保険屋さんや銀行の人に誉められて、
初めてその上手さに気付いた方が多かったようです。
また、おじいちゃんの時にはんこを作って頂き、
時を経て、再び当店に来店される方の多くが
普通の篆書ではなく、初代独特なさまざまな書体、
範疇でいうなら篆書か印相体の印鑑をお持ちです。
今も昔も、お客様は、
印鑑にはオリジナルなものを求めている証拠でしょう。
そして、印鑑は縁起ものなのです。
2代目の父は、縁起の良いと言われていることを
しないのはどうかと考え、
お客様のことを想いながら印相印を彫り、
そしてお客様の努力を促すというスタイルを確立しました。
昔、東京の印章組合から、印相印禁止と指導があったそうです。
しかし、そんな中でも組合の役員の方で、
印相印の注文を受けていたところがあったという噂です。
そうそう、大野木式の彫刻機が出た時には、
真っ先に組合の役員の方々が導入されたようです。
(初代のおじいちゃんも直ぐに導入したようです。)
にもかかわらず、
大野木式でされ使うと完全手彫りではないそうです。
組織というものは、本音と建前、
矛盾が内包されるものなのでしょうか。
まあ、彫り方で区別をつけるのではなく、
印影で判断して欲しいのですが。
一般化している印相体をあくまでも否定しようとする意向には、
疑問を感じます。
その号の現代印章の中に、
印相系の推薦図書(雑誌から通販で購入できるもの)が
2冊も載っていました(笑)
伝統ある日本の印章制度を維持していくには、
なによりお客様に目を向けたはんこ屋が
一軒でも増えることが必要です。
東京の渋谷駅ハチ公広場下のはんこ店の地図、ハンコ判子のインターネット通販は東堂印章公式サイトへ

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